Title | 幕府の官吏 | ||
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徳興里壁画古墳の前室南壁に描かれた、幕府官吏たちの詳細図である。画面には合計6人の人物が登場しているが、官帽の形によって文官、武官、下級官吏に分けられる。このうち文官は後列に立っている3人の人物で、後頭部の突起物が2つに分岐してそれが前方に曲がった形の幘をかぶっている。彼らは幽州管轄の郡太守で、幽州の刺史である鎭に拝賀するために訪れたものと思われる。後頭部の突起物が三角形でまっすぐに尖ったような形の幘をかぶっている人物は武官の身分で、前列左端に立っている人物である。この人物は、鎭の幕府に勤めている武官である可能性が高い。画面には見えないが、この人物の向かい側には、頭巾をかぶった下級官吏が贈り物を捧げる姿が描かれている。おそらく、鎭に届けられた贈り物を受け付けている様子であろうと判断される。最後に、贈り物を受け付けている武官の横の頭巾(古代の帽子の一種で、布地で頭全体を覆い後方で結んだ)をかぶっている人々は下級官吏で、2人は互いに向かい合いながら何かを書いているような様子をしている。これは、武官が受け付けた太守からの贈り物のリストを帳簿に書き記しているところであろう。
これらの幕府の官吏たちの顔の上には、墓室内部の湿気により墨の色が溶けて流れた跡が強く残っている。壁画の製作技法としては、やはり赤い線で下絵を簡略に描き、その上に彩色を加えた後、最後に黒い墨線で輪郭を描き入れて絵を完成させている。人物の顔と手の様子から、下絵に使われた赤い線が確認できる。