徳興里壁画古墳の前室南壁に描かれた、幕府人物の詳細図である。中央の黒い衣服を着ている人物は、文官用の幘(帽子の後頭部の突起物が2つに分岐してそれが前方に曲がった形の幘)をかぶって縁台上に座っている様子から、身分の高い人物であることがわかる。ひざまずいた恭しい姿勢で向かい側の縁台に座っている人物、すなわち鎭に直接贈り物を渡している様子である。その周りには、多少小さめに描かれた侍者たちが恭しい姿勢で立っている姿が見える。身分の差によって人物の大きさに差をつけて表現した、古代人の絵画観が垣間見える。